小説を2冊読了する。


 1冊目はデパートの店員と悪質クレーマーの戦いが、殺人まで至る経緯を描いたサイコミステリ。故あってタイトルは書かない。著者は黒田研二
 ミス研の批評会に向けて読んだが、これは良かった。真相を知ったときの驚愕と悔しさは期待以上。読み返してみればしっかりと伏線が張られている。しかし自然すぎて気がつかない。巧い。これが伏線の張り方の手本だろう。見習いたいものである。


 2冊目は『GOSICK』。富士見ミステリー文庫。著者桜庭一樹。タイトルとあらすじに惹かれて購入。しかし富士見ミステリー文庫に刹那でもミステリを求めたのが愚かだった。
 近代西欧の小国を舞台に、日本人の少年と金髪の少女が幽霊船のようなものの謎を解く話。伏線など皆無。ただ妙に博識で無愛想な(ある世界ではツンデレと形容するらしい)少女ヴィクトリカが勝手に真相を並べ立てていくである。唯一叙述のようなものが使われていたのが救いか。しかしその手掛かりもこれ見よがしに提示されているため、驚愕には値しなかった。個人的に大好きな中世〜近代西欧の世界が描かれていた点のみ評価する。