32.『容疑者Xの献身』東野圭吾

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

 今さら紹介は不要でしょう。前年度色々と話題になったあれです。
 面白いです。さすがです。真相を知ったとき、思わず声を上げていました。今まで信じていた世界、既成観念が覆されたときの呆然。途中で気がつく人もいたそうですが、私はまったくでした。おそらく気づかせないための仕掛けが自然だったんでしょう。久しぶりにミステリの面白さを味わった気がします。
 人物については方々で言及されているので、特に何か追記するつもりはありません。あくまで個人的な感想を言えば、あの人物像は「あり」です。ただし物語を展開させるための装置としてです。犯人や母娘があんな行動を取ったのも、すべて装置としての機能だと思います。装置に同情も嫌悪もしません。
 欲を言えば、最後の展開も含めてすべて犯人の計画通りだったら素晴らしいな、なんて。私は腹黒い人間が大好きです。何とかノートみたいな。「計画通り(ニヤリ)」みたいな。