30.『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

 コンビニ強盗に失敗した主人公は、気がつくと妙な人間ばかりが住む島にいた。ミステリ&ちょっとファンタジー伊坂幸太郎は『重力ピエロ』が個人的に今ひとつだったので、他の作品を読んでいませんでした。けれどこれなら他の作品も読んでいい気がしました。つまり面白かったです。
 最初は回想や他人の視点がちょくちょく入る書き方が気になりました。けれど慣れると逆に飽きることなく、さくさく読めました。授業中などの片手間に読むのが一番だと思います。私はそうしました。
 ミステリとしては伏線、伏線、伏線、そして回収。それが全てです。よく考えたものだと思います。考えて解ける類のものではない(はず)なので、最後まで読んでその構成に感嘆しましょう。
 不満があるとすれば、妙に現実っぽいところでしょうか。いっそ完全なファンタジーにしてしまえばよかったのに、と現実離れした小説に慣れてしまった頭が思うのです。