24.『サマー/タイム/トラベラー(1)(2)』新城カズマ

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

 ある日突然時間跳躍能力を手に入れた少女と、彼女を取り巻く同級生たちの夏。今年の夏休みはこれを読んだだけで満足でした。
 SF作品の名前が大量に出てきたり(私は『時をかける少女』「携帯忠臣蔵」くらいしか分かりませんでした)、時空間理論について触れていたりしますが、そのあたりはおまけで、本質は青春小説です。いわゆる「頭のいい」高校生が非建設的な<プロジェクト>にひと夏を浪費する。いいですね。青春ですね。高校時代、私の属するグループに響子みたいなリーダー格がいなかったことを残念に思います。
 この作品が一般的な青春小説と異なるのは、終始「終わり」の予感を漂わせていることだと思います。だらだらと学園生活を綴る青春小説も、それはそれでいいでしょう。けれど世界に終わらないものはありません。夏休みは終わる。青春時代も終わる。彼らはそんな終わりを認識し、焦燥に駆られながらも全力で何かを成し遂げようとします。私にはとても真似できそうにありません。とりあえず読後に小説を書き上げてみようと思いました。結局、まだ書けてません。
 「今年の夏休みはコ○ケにしか行かなかったよう……」と惨めな後悔している方は次の夏休みまでに一読してみてはいかがでしょう。きっと何か<プロジェクト>を始めてみたくなりますよ。