16.『少女は踊る暗い腹の中踊る』岡崎隼人

 第34回メフィスト賞受賞作。タイトル買い。何故か文字大きめの一段組。
 私はどんな小説でも一つくらい面白いところがあると信じています。けれどごめんなさい。これはどこが面白いのかさっぱりでした。
 全体的な印象としては『煙か土か食い物』と『フリッカー式』を足して2で割った感じです。ただし舞城ほどの勢いはなく、佐藤ほどの不条理や反転もありません。ただの劣化コピーです。
 キャッチコピーによると「凄惨だけど、爽やか」だとか。確かに殺人は凄惨で残酷ですが、突き抜けているわけではなく中途半端です。爽やかさも取ってつけたような感じで、別に爽やかである必要性は皆無です。主人公は狂っていると自覚しながらも狂いきれていません。何だか色々やってみたかったんけど全部中途半端に終わった、そんな印象です。何も新しいものは見いだせません。唯一岡山弁の会話だけが新鮮でした。いえ、文字で見るのが。
 一応事件の謎を追ったり真相が明かされたりしますが、主人公が勝手に気づく程度で読者は見ているだけです。まあそれなりに驚きはあるんですが。『フリッカー式』がミステリならミステリです。
 とにかく、どうしてメフィスト賞を受賞したのかよく分からない作品でした。そもそも最近のメフィスト賞がよく分かりません。過去の栄光に浸っているだけの賞に、もう期待するなということでしょうか。