5.『犬はどこだ』米澤穂信

 学生視点で綴る古典部や小市民とは少し気色が違ったが、これはこれで良かった。いや、正直前半は読み進めるのがだるかったのだが、物語が事件性を帯びてくるあたりから加速。ばら撒いておいた伏線を拾いつつ、じわじわと真相に迫っていく過程が楽しい。結末も好き。正義感なんて飾り物を振りかざすことなく、かと言って起源の無い知的好奇心を出張らせることもない。あくまで実利的で事なかれ主義な結論が、この探偵にはお似合いだと思った。