16.『インシテミル』米澤穂信

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 米澤さん一年ぶりの新刊。ミステリのガジェットに淫してみたり館(地下ですが)にinしてみたりetcetc。
 ミステリとして、面白かったと思います。館(一七角館、見取り図標準装備)、参加者と同じ数のネイティブアメリカン人形、東西古典ミステリの凶器、何か起こりそうなルール、某十戒などなどガジェットの目白押し。こんな場所に複数の人間を放り込めば、連続殺人の一つや二つ起こって当然です。むしろ起こらないはずがない。というわけで最初から最後までミステリミステリしたミステリです。ここまでガチガチなら挑戦状を入れてほしかったです。実用面から見ても。
 謎もわりと論理的に構成されています。ちゃんと読まないと何が謎だったか曖昧になりますが(なりましたが)、解こうと思って読む人には解けると思います。普段予想的中率が2%ぐらいの私ですら、とある真相については見当がつきました。にも関わらず犯人まで辿り着かないなんて……この頭はポンコツか。いや、上手いように避けられていたんですが。そもそも「〜までは分かってたんだぜ!」なんて愚かな言い訳は作中だけで十分ですね。すみません自重します。
 しかし、これだけミステリっぽいガジェットを用いていながら(あるいは用いた故に?)色々な面でミステリ読者とそうでない人の温度差をひしひしと感じました。ガジェットの細かさを気にしたり、「何故○○の○○を○○しないんだ?(複数該当)」と首を傾げたり、↑二段落目に記したようなことを思う人は、空気の読めないミステリ読みだそうです。すみません自重します。
 だらだらだらと書きましたが、要するに「米澤さんががっちりミステリ書いたよ!」な作品です。当然<古典部>や<小市民>あたりの日常・青春ミステリとは似ても似つかぬ作品なので注意。そのあたりは今月(来月?)に期待しましょう。間違っても「彼の本を初めて読む人の期待にも全力で応えた一冊(帯)」ではないと思います。

 ところで、ある凶器に思わず笑ってしまったのは私だけですか。