2.『ギリシャ棺の謎』エラリー・クイーン

ギリシャ棺の謎 (1959年) (創元推理文庫)

ギリシャ棺の謎 (1959年) (創元推理文庫)

 本格推理作家として最早知らぬ者はいないであろうクイーンの、これまた本格推理小説として最早知らぬ者はいないであろう国名シリーズ第4作。……ごめんなさい、初めてのクイーンです。
 二転三転する事件や(たぶん)さり気なく張られた伏線、読者への挑戦状など実に充実した内容でした。本格成分でお腹いっぱいです。探偵エラリーが事件解決まで真相をもったいぶるようになった経緯には思わず同情したくなりました。もちろんエラリーではなく作者に。もしかすると半分くらいその目的で書かれたものかもしれません。
 いつものことですが、登場人物はほとんど名前すら覚えていません。このあたり本格とキャラクターは相容れないものだと割り切るしかなさそうです。それでも終盤のエラリーの飄々とした態度はいいと思いました。古き良き探偵の趣がありました。最近は歪んだ探偵が多いですね。歪んだ探偵が出る作品しか読んでいないという噂もありますが。
 最後に。翻訳はもう少しどうにかならないんでしょうか。内容とは関係ないところですが、慣れるまで相当苦労しました。読むのに疲れる小説って、それは何かの修行ですか。