27.『ボトルネック』米澤穂信

ボトルネック

ボトルネック

 恋人を弔うために東尋坊に来ていた主人公は、誤って崖から転落した――はずが、気づけば見慣れた金沢の街にいた。そこは自分が生まれず、姉が生まれていた世界だった。
 うーん、「面白い」と手放しに言えない作品です。確かにキャラクターはいい味出しているし、色々と考える余地もあるし、読み所はあった気がします。もしかするとミステリかもしれません。
 けれど分かりません。この作品のどこが「青春」なのか。
 今まで米澤さんが書いてきた青春は(特にシリーズものは)青春を通り過ぎた人間には懐古と羨望を、青春の最中にいる人間には共感と臨場感を抱かせる類のものだったと思います。そして世界の青春小説の半分くらいはそうだと思います。
 けれどこの作品、そんな感情を抱くにはあまりに痛ましい。懐かしくもないし共感もしない。羨望なんて以ての外。あるのは冷徹な痛ましさだけ……って、青春はそんなに痛いものでしたか。ふうん、知りませんでした。とにかくこの作品が「青春」と銘打たれていることに、私は疑問を覚えました。出版社のせいかもしれません。
 関係ないですが早く古典部シリーズの短編が読みたいです。