20.『ドグラ・マグラ』夢野久作

 日本三大奇書の一つに数えられる、夢野久作の代表作。精神病患者と心理実験、そして殺人事件に関わる顛末。読むと一度は精神に異常をきたす、とか。
 「脳髄論」や「胎児の夢」など現代の科学や常識を逸脱した論文の数々、じわりじわりと恐怖を伴いながら明かされる真相、一意の解釈を認めない結末、などなど。奇書と言われるだけあって、評価されるべき点はあったように思います。
 ただ面白かったかと聞かれると、素直に頷けません。全体の半分以上を占める説明や論文の羅列には辟易しました。我ながらよく読み切ったものだと思います。精神と時の部屋で修行する孫親子の気持ちでした。オラは超野菜人になるために小説を読んでるんじゃねえぞ! いくら文学的に価値が高くても、面白くないものは面白くないです。いくら結末が素晴らしくても、そこまで引っ張ってくれる何かがないと読みたくないです。
 他の夢野作品だと「瓶詰の地獄」あたりが短くて色々分かりやすくて好きです。夢野久作は短編のほうが好きかもしれません。