図書館のおはなし

 高校生活における後悔をひとつ挙げるとすれば、それは私が図書委員ではなかったことです。あるいは図書委員と友達ではなかったことです。将棋やトランプで浪費した休み時間、帰宅部の活動を全うし続けた放課後。そんな時間を少しでも学校の図書館で過ごせなかったこと。それだけが、心残りです。
 私が本を読み始めたのは高校3年の夏頃でした。既に図書委員は別の人に決定していますし、そもそも受験勉強で図書館どころではありませんでした。加えて学校の図書館は品揃えが悪かったのです。なら要望を出せという話ですが、読書初心者の私はそこまでする気になりませんでした。品揃えのいい市の図書館に通い、受験勉強と偽って『GOTH』や『工学部水柿助教授の日常』などを読んでいました。
 けれどできることなら、私は学校の図書館に通いたかったのです。毎日毎日図書館に籠もっているような、そんな人間になりたかったのです。サークルで図書館に関する話を聞くたび、切にそう思います。
 そんなわけで、私は今でも学校の図書館というものに羨望と幻想と偏見を抱いています。ただ、それだけです。え、オチ? それは食べ物ですか。